$ 重要なサポーターエンターテイメントは、どのように映るかが重要である。テレビでは、女優はCMのたびに化粧直しをして、有名女優ともなれば専用の顔用ライトが用意される。いわゆる一つのシワ隠しである。時々テレビを見ていて肌が真っ白になるくらいライトを当てている熟年女優がいるが、あれでは自分から「私はシワがいっぱいあるからライトで隠してます」と言っているようなものである。まあ魔邪がものまねをするようなぶりっ子少女風に言えば、笑い飛ばせるのであろうが…。
WWEでもテレビの中でどう映るかは極めて重要視される。専属のスタイリストが、変幻自在のメーキャップを施す。ステファニー・マクマホンの聖女バージョンと悪女バージョンの化粧の使い分けなどは、まさにプロフェッショナルである。悪女バージョンの時はアイラインを黒めにしてきついイメージを出すが、本当にきつそうに見えてしまうから不思議である。ストーンコールドやロックが入場する際のカメラワークは素晴らしいの一言だし、HHHの霧吹きシーンのライティングは、あれだけでお金が取れる代物である。 会場の電気を全て消して、HHHの真上からスポットライトを照らす。HHHが上に向かって霧を吹くと、まるで霧が宝石であるかのようにキラキラ光り、見事な肉体が妖しく光り輝く。アンダーテイカーの入場シーンにいたっては、名画の域に達している。鐘の音が鳴った瞬間にテイカーの世界が始まり、本当に霊界から墓堀人が舞い降りたかのような錯覚を覚える。まさに息をのむシーンである。 ![]() こんなプロレスであるが、少し特殊な決まり事がある。何が特殊かと言えば、「おろされたサポーターを自分であげてはいけないこと」。つまり試合中のお色直しはないのである。このお約束はプロレス創世記から全く変わっていない。何が目的かと言えば、ファンに自分のウィークポイントをアピールすること。プロレスは一試合一試合それぞれに起承転結を持たせなければいけない。故に試合にテーマを設定する必要がある。 体の一部分を攻防のテーマにした上で試合を成立させることは、プロレスの基本である。そのためには、観客に「この選手はここを痛めています」とアピールする必要がある。それがサポーターおろしの魔術である。最近のレスラーは大部分が両足に膝の保護のためのサポーターをつけており、また半分くらいのレスラーは、それに加えて両肘にもサポーターをつけている。試合を進める上で、このサポーターが重要なアイテムとなる。 ![]() リック・フレアーの4の字固めの攻防を見ていくと、フレアーはまず相手の膝の後ろから攻撃を加える。相手は悶絶し膝を痛めたことをアピールする。フレアーは相手の膝のサポーターをおろし、ニークラッシャー。続いてロープに足を乗せての足殺し。相手のレスラーはおろされたサポーターは絶対に元の位置に戻さない。痛めていることの意思表示である。最後に4の字固めでギブアップ。観客は膝を中心とした起承転結に酔いしれる。(そう言えば、フレアーは最近ニークラッシャーを使わない。何故だろう?) これに対し、猪木は以前痛めていた腕とは反対の腕に包帯を巻いて入場し、相手に心理戦を仕掛けたことがあった。TVでは小鉄さんが詳しく状況を説明したため視聴者は理解することが出来たが、会場の観客だけは試合中の隠された攻防の意味が分からなかった。会場で試合を見たファンが試合の本当の意味をプロレス雑誌で知るのでは、プロレスとは言えない。プロレスは複雑かつ簡単でなければいけない。会場のファンとTVの視聴者に同時に物事を伝えることは難しい。 気に入って頂けましたか?
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